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2000年07月29日

5. トラックレース(3)長距離種目

 主なトラック競技のうち、長距離系の種目と呼ばれるものは「4kmインディヴィデュアル・パーシュート(個人追抜競争)」「4kmチーム・パーシュート(団体追抜競争)」「ポイントレース」「マディソン」「スクラッチ」の5種目です。今回はこれらの長距離種目について簡単な説明をしていきましょう。

1)4kmインディヴィデュアル・パーシュート(個人追抜競争)
 イメージ的には「1kmタイムトライアル」の4km版と考えていただいて結構です。ただ1kmと違うのは「追抜競争」であることです。
 まず、予選によって決勝と3位決定戦(本戦)に出場する選手を決めます。この予選は2人同時スタートの4kmのタイムトライアルであり、個人がベストを尽くすのみです。当然、予選タイムの1位と2位が決勝戦へ、3位と4位が3位決定戦に進むのですが、ここからが単なるタイムトライアルと違うところです。以下で本戦のルール説明をしていくことにしましょう。
 予選同様、対戦する2名がバンクのホームとバックから同時にスタートします。そのまま4kmを走るわけですが、本戦の場合、競技の途中で一方がもう一方に追いついてしまったらそこで競技は終了、追いついた選手の勝ちとなります(予選では追い越しがあってもそのまま続行されます)。これが「追抜競争」たる所以です。そして、この追抜きルールが2人のあいだにカケヒキを生み出します。
 本戦において、スタートした選手は一定のペースで走りベストタイムを狙う必要はありません。最終的に相手より早くゴールするか、さもなくば途中で相手に追いついてしまえばいいのですから。競技中、選手はお互いに相手の位置を見ながら走っています。相手が序盤からペースをあげて追いつこうとしているのであれば、自分もオーバーペースと分かっていながらペースを上げざるを得ないのです。400mバンクが主流の日本では「半周差=約13秒」ですが、世界標準の250mバンクなら約8秒、作戦次第では追いつけない差ではありません。こうして、見た目ではわかりずらい非常に微妙なカケヒキが両者の間で発生することになります。

 実際、本戦のタイムは予選のタイムより遅いことがほとんどです。これは、見ているだけでは分かりずらい、ペースのアップダウンが発生しているためです。また、この4kmインディヴィデュアル・パーシュート(個人追抜競争)で速い選手は、ロードレースのタイムトライアルなどでも強烈な力を発揮することが多いです。

i-pursuit

↑ ツール・ド・フランスでも活躍しているBradley McGee(Australia)選手
(アテネ五輪2位)


2)4kmチーム・パーシュート(団体追抜競争)
 「4kmインディヴィデュアル・パーシュート(個人追抜競争)」のチーム版です。1チーム4人で行います。個人的な感想を言えば、トラックレースの中で最もキツイ種目ではないでしょうか。ルールは「4kmインディヴィデュアル・パーシュート(個人追抜競争)」とほぼ同じですが、それに加えて、団体追抜ではチームワークが重要なポイントとなってきます。
 個人追抜と同様、バンクのホームとバックから4人1組の2チームが同時にスタートします。当然、両チームはドラフティングを利用しながら1列で走るのですが、チーム・スプリントのようにロケット発射(1人づついなくなる)していくのではく、半周〜1周(2周)毎に先頭交代をします。先頭の選手はバンクのコ−ナー部分で、1人でバンク上部まで斜めに駆け上がりつつ2人目にチームの先頭をゆずり、そのまま今度は下りの力を利用しながらチームの最後尾目指して駆け下りてくるのです。こうすることにより、ダッシュすることなく先頭交代ができるのです。機会があれば、みなさんも実際に一度見てみてください。
 また、団体追抜のタイムはチームの3番目の選手がゴールしたときのタイムで計られます。つまり、最初は4人でスタートしますが、途中で1人だけは千切れて(=ペースについていけず前の選手から離れてしまう)もかまわないのです。ですから、一番ツライ思いをすることになるのはチームの中で3番目に強い選手ということになります。経験ある方も多いと思いますが、限界以上の力を強いられ、切れるに切れられない状況は本当にキツイです。地獄の苦しみと言えるでしょう。

↓ チームは違いますが、先頭交代のイメージ図です。

team-pursuit1

team-pursuit2

team-pursuit3

team-pursuit4

team-pursuit5

少しはイメージできましたか?


team-pursuit6

↑ スタートは横一列です。


team-pursuit8

↑ 千切れかけています。


team-pursuit7

↑ 追抜きの瞬間です。


3)ポイントレース
 ポイントレースはトラックレース初心者が見ていて一番面白い種目だと思います。以前、ある人が「ジャン(鐘)が鳴るとみんなが一斉にもがき(=全力でペダルをこぐ)だして、ルールはよくわかんないけど面白い」と言っていましたが、確かに見ている分には面白いです。トラックレースの大会でも、ポイントレースのときだけは、まるで競輪場のように罵声が飛び交って大盛り上がりです。しかし、選手の方はたまったもんじゃありません。40分〜60分間もがきっぱなしです。
 ポイントレースは一度に数十人が走る、トラックレースの中で最も参加人数が多い種目で、かつ、競技距離も(決勝で)30〜40kmもあります。ポイントレースには、ポイント周回という特別な周回が(普通は)2000mごとに設定してあり、ポイント周回(1周前にジャンが鳴ります)のホーム・ストレッチ・ラインを通過した順に5pt、3pt、2pt、1ptとポイントが与えられます。最終的に、ポイントを1番多く獲得した選手の優勝です。ですから、最後に1着でゴールした人が優勝とは限らないのです。
 ポイントレースには様々なタイプの選手が出場します。スプリントが得意な選手、タイムトライアルが得意な選手、インターバルに強い選手、などなど。スプリンターは集団で待機していてポイント周回だけ頑張ればいいのですが、その他の選手はそれではポイントがとれません。そこで、スプリンター以外は積極的に逃げをつくろうとします。そんな中から逃げ集団が誕生し、後ろの集団が(誰が引くかの)牽制状態になっているうちに、みるみるうちに差が開き、やがては逃げ集団が1周差をつけてメイン集団に追いついてしまうことがあります。このようなとき(Lapが発生したとき)には、追いついた選手にポイント周回とは関係なく20ptが与えられます。ですから、ポイントレースはポイント周回を狙う選手、Lapを狙いにいく選手、足を貯めている選手、と、さまざまな選手がそれぞれの思惑を持ちながら走っていることになります。まるで、ちっちゃなロードレースと言うことができるでしょう。

 ロードレースの場合とは違い、走っている選手はバンクにある掲示板を見たり観客の声を聞くことによってポイントリーダーや現在の状況を把握することができます。その上で作戦を変更しつつ、マークする相手を捜したりポイントを取りにいくのです。

point1

↑ スタート前(人数が多いのでフェンスに掴まってのスタート)。


point2

↑ バンク上部で牽制している選手とアタックをかけている選手。


point3

↑ 先着4人までがポイントをGETできます。


4)マディソン
 マディソンは2人1チームでおこなう競技です。内容的にはポイントレースに似ていますが、ポイントレースがポイントを競うに対して、マディソンではLap数を競います。マディソンにもポイント周回がありますが、ポイントが重要になるのは周回数が同じ場合のみです。
 さて、マディソンで一番印象的なのは、チームメイト同士がタッチをする場面です。マディソンではチームの2人が交代しながら走ります。つまり、レースをしているのは常に1人で、もう1人はバンクの上部で休んでいるのです。その2人が交代するときにタッチをしなければなりません。しかし、タッチと言っても単なるタッチではありません。激しいタッチなのです。
 まず、タッチされる側は、バンク上部から降りてそこそこのスピード(30〜40km)で走りながらパートナーを待ちます。パートナーが後ろから迫ってきたら、タッチされる側は、ちょうどリレーのバトンを受けとるときのように片手を後ろ(背中の後ろ)に出します。タッチする側は、追抜きざまにパートナーのその差し出された手を相手とは反対の手で握りとり、そのまま自分が前に出たところで、パートナーを投げるように前に押し出すのです。このようにすることで自分の慣性力を相手に伝えることができるのです。このシーンがマディソンの特徴と言えるでしょう。

 マディソンのタッチは、ほぼ1周ごとに行われます。「休む時間があるから楽なんじゃないの」と誤解している方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはストップ&ゴーの連続で、ポイントレース以上にキツイ種目なのです。

↓ 分かりにくいですが、投げる瞬間。

madison1

madison2

わかりましたか?


madison3

↑ 後ろから見た写真です。


5)スクラッチ
 「スクラッチは、定められた距離を走りフィニッシュ順位を競う個人種目」らしいです。距離は男子エリートで15kmですが、なんせ国内ではあまりお目にかかれない種目なので、私にもよくわかりません。世界大会の公式種目になったのもここ最近のことです。申し訳ないです。

写真はすべてcyclingnews.com(http://www.cyclingnews.com/)より


以上、『JCF競技規則(2005年版)』を参照
JCFホームページ(http://www.jcf.or.jp/jp2/index.html)から
ダウンロードできます。


 さらに、トラックレース&ピストレーサーについて知りたい人は、

『ピストな自転車』




(注:すべての記事は経験と主観にもとづいており、情報の正確性および正当性は
   保証できません。



posted by ホソカワ at 16:12 | TrackBack(0) | 自転車競技入門2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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